前回の記事に引き続いて、日本温泉協会が取り仕切る天然温泉表示制度について勉強をしましょう。天然温泉表示制度については、戦後になってから温泉と名のつくだけの施設と本当の天然温泉を使った施設を区別するために出来た制度で、25年の時を経て後に表示看板の内容が見直され、浴槽単位のプロフィールと適正度評価が掲載されるようになったという成り行きでしたね。そして今回は、見直し後のテスト看板を使った試行期間(2年間)終了後に本採用された、現行の天然温泉表示看板についての解説から入りましょう。
木製のテスト看板に代わって登場した新天然温泉表示看板は、白地に青系の文字で情報が記載されたものになります。湯気4本の天然温泉表示マークが占める面積は減って、テスト看板では金属製であった"天然温泉利用証"プレートが、"温泉利用証"という記載に変わって看板自体に一緒に印刷されるようになりました。以前プレートであったのは、掲示期限が切れて看板内容を更新する際にプロフィールと評価の部分だけを取り外して木製部分を再利用できるような工夫だったのかもしれませんが、新表示看板は全体的に安っぽくなったので、更新時に丸ごと交換してしまうようにしたのかもしれません。
新表示看板の温泉プロフィール部分は、利用源泉に関する情報と浴槽の温泉利用に関する情報の2つのセクションに分かれ、源泉に関する情報では新たに湧出量と源泉からの距離が加わり、泉質は新泉質名と掲示用泉質名が併記されるようになっています。
浴槽の温泉利用に関する情報のセクションでは、適正度評価のうち給排湯方式、加水、新湯注入率の3項目について具体的なデータを表示しています。また、入浴剤や消毒の添加有無が明記されるようになりました。
適正度評価は全部で6項目(源泉、泉質、引湯、給排湯方法、加水、新湯注入率)。テスト看板では源泉・引湯で一項目であったのを分割し、また給湯方式が給排湯方式に、加水の有無が加水にといったように表現の微細な変更がありました。そして、評価の段階については1〜5までのサイコロの目で表示するようになりました。こうして、全項目満点の温泉が"オール5"温泉と呼ばれるようになったのです。
こうして2005年(平成17年)5月に鳴り物入りで登場した新天然温泉表示看板ですが、現在では審査および看板の新規発行が停止されてしまっています。また5年以上前に審査を受けて掲示期限が切れてしまった看板についても再審査による更新が許されず、暫定で延長掲示が許されているという状態です(現状新天然温泉表示看板を掲示している施設一覧:日本温泉協会)。そして2018年8月には全ての表示看板の掲載期限が切れるのですが、そのときをもって現行制度を終了しようという動きも出ています。実際にこの制度が終了してしまった場合、"オール5"温泉の認定はなくなり、また温泉の利用適正度を5年毎に審査し直すことをふまえての"オール5"であったわけですから、"元オール5"温泉といったような呼び方すら何の意味も持たなくなってしまいます。
何故そのようになってしまったのかというと、新天然温泉表示看板の立ち位置が不鮮明であったわりにコストが大きく、結果流行らなかったからではないでしょうか。なにしろ審査する項目が多岐にわたるため一度のタイミングで多くの施設に看板を発行することができません(その上、更新時にまた審査が必要です)。また、適正度評価は全項目満点の"オール5"とでもなればアピールにも使えるのでしょうが、源泉からの距離など施設側の努力によっても改善の余地がない項目もあり、目標づけにも使えません。
加えて、施設の利用客が知りたい温泉の利用方法については、テスト看板の試行期間中2004年(平成16年)に起きた温泉偽装問題を受けて、2007年(平成19年)より温泉法で掲示が義務づけられる温泉分析書の中にある程度まで記載しなければならないことになりました。テスト期間の最中やあるいは前にこういった改正があれば棲み分けを目指すことも可能だったと思いますが(余談ですが、この偽装問題を受けて、本採用された看板にも入浴剤や消毒の添加有無が記載されるようになったものと思われます)、色々とタイミングも不運であったのでしょう。
もし現行制度の見直しによって新たな天然温泉表示看板が登場することになったら、おそらくよりシンプルなものになるでしょう。そのデザインにもぜひ期待しておきたいところですね。
現行の天然温泉表示看板の仕様
木製のテスト看板に代わって登場した新天然温泉表示看板は、白地に青系の文字で情報が記載されたものになります。湯気4本の天然温泉表示マークが占める面積は減って、テスト看板では金属製であった"天然温泉利用証"プレートが、"温泉利用証"という記載に変わって看板自体に一緒に印刷されるようになりました。以前プレートであったのは、掲示期限が切れて看板内容を更新する際にプロフィールと評価の部分だけを取り外して木製部分を再利用できるような工夫だったのかもしれませんが、新表示看板は全体的に安っぽくなったので、更新時に丸ごと交換してしまうようにしたのかもしれません。
新表示看板の温泉プロフィール部分は、利用源泉に関する情報と浴槽の温泉利用に関する情報の2つのセクションに分かれ、源泉に関する情報では新たに湧出量と源泉からの距離が加わり、泉質は新泉質名と掲示用泉質名が併記されるようになっています。
浴槽の温泉利用に関する情報のセクションでは、適正度評価のうち給排湯方式、加水、新湯注入率の3項目について具体的なデータを表示しています。また、入浴剤や消毒の添加有無が明記されるようになりました。
適正度評価は全部で6項目(源泉、泉質、引湯、給排湯方法、加水、新湯注入率)。テスト看板では源泉・引湯で一項目であったのを分割し、また給湯方式が給排湯方式に、加水の有無が加水にといったように表現の微細な変更がありました。そして、評価の段階については1〜5までのサイコロの目で表示するようになりました。こうして、全項目満点の温泉が"オール5"温泉と呼ばれるようになったのです。
表示看板新規発行・更新が停止されている現状
こうして2005年(平成17年)5月に鳴り物入りで登場した新天然温泉表示看板ですが、現在では審査および看板の新規発行が停止されてしまっています。また5年以上前に審査を受けて掲示期限が切れてしまった看板についても再審査による更新が許されず、暫定で延長掲示が許されているという状態です(現状新天然温泉表示看板を掲示している施設一覧:日本温泉協会)。そして2018年8月には全ての表示看板の掲載期限が切れるのですが、そのときをもって現行制度を終了しようという動きも出ています。実際にこの制度が終了してしまった場合、"オール5"温泉の認定はなくなり、また温泉の利用適正度を5年毎に審査し直すことをふまえての"オール5"であったわけですから、"元オール5"温泉といったような呼び方すら何の意味も持たなくなってしまいます。
新天然温泉表示看板は何故流行らなかったか
何故そのようになってしまったのかというと、新天然温泉表示看板の立ち位置が不鮮明であったわりにコストが大きく、結果流行らなかったからではないでしょうか。なにしろ審査する項目が多岐にわたるため一度のタイミングで多くの施設に看板を発行することができません(その上、更新時にまた審査が必要です)。また、適正度評価は全項目満点の"オール5"とでもなればアピールにも使えるのでしょうが、源泉からの距離など施設側の努力によっても改善の余地がない項目もあり、目標づけにも使えません。
加えて、施設の利用客が知りたい温泉の利用方法については、テスト看板の試行期間中2004年(平成16年)に起きた温泉偽装問題を受けて、2007年(平成19年)より温泉法で掲示が義務づけられる温泉分析書の中にある程度まで記載しなければならないことになりました。テスト期間の最中やあるいは前にこういった改正があれば棲み分けを目指すことも可能だったと思いますが(余談ですが、この偽装問題を受けて、本採用された看板にも入浴剤や消毒の添加有無が記載されるようになったものと思われます)、色々とタイミングも不運であったのでしょう。
もし現行制度の見直しによって新たな天然温泉表示看板が登場することになったら、おそらくよりシンプルなものになるでしょう。そのデザインにもぜひ期待しておきたいところですね。
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